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理屈っぽいアニメレビュー

【2020年冬アニメ】覇権候補3タイトルとその理由【放送前】

 

 

ゆく年くる年、ゆくアニメくるアニメ

年末年始。そろそろ冬アニメということで今回も覇権予想だ(紅白歌合戦をBGMに作成中)。

 

2019年秋アニメについては覇権予想および前半戦の感想の記事を上げてきたが、全部終えての総評は結局やらないことにした(当初はやる予定だった)。色々理由はあるが、一番大きいのは、個人的に今年の秋アニメは不作に感じたからだ。『PSYCO-PASS 3』や『ハイスコアガール II』をはじめとして面白い作品はもちろんあったが、全体として見るとうーん...といった感じ。途中で切ってしまった作品も多かった。まあ、筆者が面白い作品を見逃していただけという可能性もなくはないが。

 

さて、今回も前回と同様、「アニメは観たいけど本数多すぎ!おすすめだけ教えてくれ!」とういう人に向けて、期待値の高い作品とその根拠をサクッと紹介していく。各作品について、覇権予想の確度(自信)も併記しておいた。ただし、個人的な好みや勘を多分に含んだ予想なので悪しからず。前置きはこんなところにして本題に移ろう。

 

 

これ観とけば間違いない

『pet』(自信:90%)

原作:三宅乱丈(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
監督:大森貴弘
脚本:村井さだゆき
制作:ジェノスタジオ

あらすじ(公式HPより引用)

人の脳内に潜り込み、記憶を操る能力を持つ者達がいた。人は恐れ、蔑み、彼らを「pet」と呼ぶ。

能力者である“ヒロキ”と“司”は特別な絆で結ばれていた。彼らは互いに縛り合うことで、自身をも蝕むその力から脆く危うい心を守った。

「ただ、一緒にいたいだけ」

そんな彼らのささやかな願いを裏社会の組織”会社”は無情にも利用し,翻弄する。歪んでしまった2人の”絆”がもたらす結末とは――? 

 

理由:『刻刻』再来の予感

『宇宙よりも遠い場所』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』、『ゆるキャン△』をはじめとする名作が放送された2018年冬アニメ。上記3作がビッグタイトルとするなら、『刻刻』は同期のダークホース。放送前の下馬評はそれほど高くなかったものの、ふたを開ければ上記のビッグタイトルに引けを取らない面白さだった。原作の独特な世界観およびスリリングなストーリー展開がジェノスタジオの良質で武骨なアニメーションに見事にハマった秀作である(円盤の売れ行きは芳しくなかったが)。

 

で、『pet』もこの『刻刻』に近い匂いがする。独特なタッチの画に奇抜な用語(「ヤマ」、「タニ」、潰し屋など)。どう考えても映えないキービジュアル。加えて、10年以上前の作品を今更アニメ化するというクセの強さ。「旬?売れ線?そんなもん知らん!面白さが全てだ!」という気概を感じる。監督と脚本は『夏目友人帳』『デュラララ!!』のタッグ。これを今最も信頼できるアニメーション会社の一つであるジェノスタジオが制作するのだから、面白くならないわけがない。もはや確定演出。

 

Wikipediaによると、ジャンルはSF・サスペンスらしい。正直PVを観ただけでは内容はほとんど読み取れなかったが、とりあえずぶっ飛んだ世界観であることだけは伝わってきた。一言で言えばサイケデリック。放送前に情報を明かし過ぎない(説明しすぎない)というのは実は結構重要なポイントで、あくまで経験則だがこういう不親切な作品には良作が多い。『バクマン。』でも「上書きが長々と書いてあるのに限ってつまんないんだよな」って相田さんが言ってたしね。

 

ちなみにOPはTK from 凛として時雨。PVでちょろっと聴いたが、とにかくオシャレだし何より作品の雰囲気にぴったりマッチしていた。これはもう間違いないやつ。絶対観るべき。


 

『恋する小惑星(アステロイド)』(自信:70%)

原作:Quro(まんがタイムきららキャラット芳文社
監督:平牧大輔
シリーズ構成:山田由香
アニメーション制作:動画工房

あらすじ(公式HPより引用)

天文・地質っておもしろい…!!幼い頃キャンプ場で出会った男の子と“小惑星を見つける"という約束をした木ノ幡みら。高校では天文部へ入部しようとしたが、今年から「天文部」と「地質研究会」が合併して「地学部」になっていた…!?

地学系女子(ジオジョ)たちと一緒に、いろんなキラキラを探しに行きませんか?

 

理由:きらら × 動画工房

今期のきらら枠。アニメーション制作は動画工房。あくまでPVを観た段階の印象だが、あの『NEW GAME!』を彷彿とさせるクオリティだった。きらら系との相性がいいことで定評のある動画工房だが、今作は特に気合が入っているように感じる。

 

ストーリーは天文学・地質学を題材とした結構ガチ目なサイエンスもの。PVからも、美しい星空の描写や空間の陰影のつけ方など、繊細な表現力が垣間見えた。明るくのんびり、脳死で観ることができる、というのがきらら系の特徴だが、そういう平均的なきらら作品とは少々毛色が異なると予想される。とはいえ、キャラクターについてはデザインも声も可愛かったので、そこはきららの特色がしっかり出ている。可愛いキャラ同士のほんわかしたやりとりに癒される場面も多々あるだろう。

 

主役声優を大御所で固めていないのも好印象。人気声優ばかり使っている作品はかえって怪しい、というのが最近の自分の見解なので。


 

『ID: INVADED イド: インヴェイデッド』(自信:70%)


監督:あおきえい
脚本:舞城王太郎
アニメーション制作:NAZ

あらすじ(公式HPより引用)

殺意を感知するシステム「ミヅハノメ」を用いて、犯罪事件を捜査する組織、通称「蔵」。

そして、「ミヅハノメ」のパイロットとして犯人の深層心理「殺意の世界(イド)」に入り、事件を推理する名探偵・酒井戸。

頻発する凶悪かつ謎多き事件と、そこに見え隠れする連続殺人鬼メイカー「ジョンウォーカー」の影を追っていく。

 

理由:あおきえい監督のアニオリ作品! 

この作品を推す理由は何といっても監督があおきえいであること。『空の境界』『Fate/Zero』の監督である同氏は実績・実力共にトップクラス。個人的にも好きな演出家の一人である。『やがて君になる』における、あの伝説的な第6話の演出も彼だ。

 

脚本の舞城王太郎氏はミステリー作家。第16回三島由紀夫賞受賞、第131回・第142回・第147回・第148回の芥川賞で候補作に選ばれるなど、こちらも確かな実績がある。ガチのミステリー作家がアニメの脚本を手掛けたというわけだ(ちなみにTVアニメの脚本参加は今回が初)。アニメーターも『Re:ゼロから始める異世界生活』『アカメが斬る!』『Fate/stay night [Heaven's Feel]』をはじめとするヒット作の作監が揃っている。総じて、制作体制が本気すぎる。

 

ジャンルはSFミステリーだが、これも先に紹介した『pet』と同様、PVを観てもストーリーの大筋が全くもってつかめない。真っ白な空間に浮かぶ一人の少女。胸にはナイフが突き刺さり、くり抜かれたと思しき右目は暗く落ち窪んでいる。そして、彼女の前で立ち尽くす一人の青年、酒井戸。彼が理解しているのは、目の前の少女の名前が「かえるちゃん」であるということ、そして自分が「かえるちゃん」の死の謎を解かなくてはならないということのみ。うん、分からん。ただまあ、とりあえずこのアニメが只者ではないということだけは分かる。既存の作品と被らない斬新な世界観。過度に奇抜な作風は通常であれば地雷要素でしかないが、本作はスタッフが充実しているのでスベる心配はほとんどないし、むしろワクワクする。

 

本作を大穴と位置付ける声もあるが、僕の中ではガチガチの本命。面白くなって当然の作品だと考えている。

 

 

他に気になった作品

以下、視聴予定の作品。多分面白い。

 

・『映像研には手を出すな!』

アニメ制作を題材にした作品。しかしながら、『SHIROBAKO』と違って本作はアニメ制作会社ではなく学校の部活(映像研)が舞台となっている。前評判はかなり高い。放送局(スポンサー)がNHKなので、作画が崩れる可能性は皆無。クオリティは保証されている。原作コミックの評価も高い。ただ、NHK放送のアニメは安定してはいるものの飛びぬけて面白かった試しがないので、覇権候補の3本からは外した。

 

・『ドロヘドロ

覇権候補に入れようか最後まで迷った作品。アニメーション制作は『賭ケグルイ』および『この世界の片隅に』を手掛けたMAPPA。原作は完結済みの人気コミックで、魔法によって顔をトカゲにされてしまった記憶喪失の男が本当の顔を取り戻すために旅に出るというなかなかカオスなストーリー。『pet』『ID: INVADED』とはまた違ったダーク・ファンタジーな世界観がウリの作品だ。魔女の鍋をひっくり返したような混沌とした世界がアニメーションで見事に表現されている。流石MAPPA。期待しかない。ただし、かなり毒々しい作風なので、人を選ぶ作品だとは思う。とりあえずPVを観てみて、拒否反応が出ないのであれば視聴するべき。

 

・『へやキャン△』

みんな大好き『ゆるキャン△』の続編(スピンオフ?)。YouTubeに第0話が上がっていたが、良くも悪くも前作のままだった。女子高生のキャンプをただゆるりと描く『ゆるキャン△』は、決してストーリーを楽しむ作品とは言えない。ただ、一日の終わりにあったかいココアでも飲みながら脳死で観るといい感じにメンタルが整う。ストレス過多の社会で日々摩耗していく心に潤いを与えてくれるオアシスのような存在だ。今回の『へやキャン△』も同様の作品であると予想される。覇権候補とか抜きにすれば一番推したい作品。万人におすすめできる。

 

・『7SEEDS

昨年の夏頃にNetflixで独占配信されていた作品が今期になって地上波で放送。したがって完全な新作ではない。原作は知る人ぞ知る名作といった感じで結構面白そう。ジャンルはいわゆるサバイバルもの。全体的な印象としてちょっと地味というか、陰気すぎる気がしないでもない。ハードなストーリーについていく根気がある人は楽しめそう。

 

・『空挺ドラゴンズ

飛空艇に乗ってドラゴンを狩るという王道ファンタジー的世界観。捕獲したドラゴンを食材に用いた料理モノとしての側面も持ち合わせており、昨今の異世界ファンタジーの「ツボ」もしっかりと押さえている。レビューやあらすじを軽く調べてみただけだが、ストーリー自体はそれほどハードではないようなので、肩の力を抜いて観ることができそうだ。原作コミックは非常に人気で、『ダヴィンチ』にてノベライズも連載中。最大の懸念事項はアニメーションが全て3DCGである点。フルCGはよほどうまく作らないと駄作になる...。放送枠が『+ULTRA』というのも正直不安(海外受けを意識しているからか、今のところ『+ULTRA』作品に良いイメージがない)。

 

・『虚構推理』

[恋愛×伝奇×ミステリ]というごった煮っぷり。イロモノ感満載だが、原作は結構本格的なミステリー小説らしい。2015年にコミカライズされ、今回アニメ化に至った。ところで、アニメ公式サイトの原作者コメントが興味深い内容だったので紹介しておく。

漫画原作の仕事を長くやっていたため、「久しぶりに小説を発表しようというのだから、漫画には向かない長いセリフや説明の多い凝ったミステリをやろう」と書いた小説が漫画になり、さらにアニメになるというのが不思議でなりません。
これは私の感覚がおかしいのか、それともそういう小説をビジュアル化する方々の腕が尋常でないのか、見て判断していただけると幸いです。

こんなワクワクする紹介をされると見ざるを得ない。キャラデザも非常に好み。ただ、作画のクオリティは正直よく分からない。途中で崩れてくる可能性も十分にある。

 

・『ダーウィンズゲーム』

何故か観ようと思った。全く根拠はないけどこの作品は多分最後まで観ると思う。

 

 

まとめ

今期は豊作な気がする。あくまで勘だが。少なくとも、先に紹介した3作はかなり自信をもっておすすめできるので視聴してみてほしい。あと、今期は『俺ガイル』『エヴァンゲリオン』『かぐや様は告らせたい』など、再放送枠もアツいのでそちらも要チェック。今回はそんなところで。