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理屈っぽいアニメレビュー

【2019年秋アニメ】覇権候補3タイトルとその理由【放送前】

 

 

秋アニメ、どれを観る?

7月から始まった夏アニメもいよいよ佳境に入ってきた。夏アニメが終われば10月からは秋アニメが始まる。

 

1クールが終わって次の期に移る際、視聴者が必ず直面する問題は「来期はいったいどれを観るべきか」ということ。僕自身、次の期が始まる度にアニメ情報サイトで放送予定タイトル一覧を漁り、スタッフ・キャスト・PVから面白くなりそうな作品を選別している(そしてその作業自体も楽しみだったりする)。

 

しかし、視聴するアニメを選ぶという作業を面倒に感じている人も少なくないだろう。というのも、放送されるアニメの本数が毎回多すぎるのだ。最近では1クールに50近くのタイトルが放送されるが、その中から自分が視聴する数本を本気で選別するとなると結構な時間がかかる。しかも、(これはあくまで僕の考えだが)アニメは基本的に「ハズレ」の方が多いので、面白い作品を選び出すには入念なリサーチアニメに関する知識が必要になる。

 

そこで今回は、「面倒な作業はごめんだ!どれがおすすめか手っ取り早く教えてくれ!」という人に向けて、僕が予想する2019年秋アニメの覇権候補3タイトルを紹介する。なお、各作品について、覇権予想の確度(自信)も併記しておいた。おすすめするにあたって論理的な根拠はできるだけ提示するつもりではあるが、個人的な好みやフィーリングも多少は含まれているので、そこはご了承いただきたい。

 

秋アニメの覇権はこの中にいる(多分)

BEASTARS』(自信:85%)

原作:板垣巴留秋田書店週刊少年チャンピオン」連載)
監督:松見真一
脚本:樋口七海
音楽:神前暁MONACA
制作:オレンジ

あらすじ(公式HPより引用)

全寮制のチェリートン学園でアルパカのテムが何者かに食殺された。
肉食獣と草食獣が共存する世界で、それは最大のタブーであり、超えられない種の壁でもあって…。
ハイイロオオカミのレゴシ(17歳)と多種多様な動物たちが織りなす、激しく切ない青春群像劇!!

 

理由①:原作コミックの評価の高さ

ご覧の通り、とにかく色んな賞を取りまくっている。僕自身この作品を読んだことはないが、間違いなく面白い。(信頼できる漫画オタクの友人も絶賛していた。)

 

興味深いことに、ウィキペディアにおいてこの作品のジャンルが「動物、青春、ヒューマンドラマ」となっていた。なるほど。草食動物と肉食動物が共存して社会活動を営む歪な世界を舞台としつつも、そこで描かれるのはあくまでもリアルな人間の心理ということか。人間の「社会性」と「野性」の摩擦が本作のテーマの一つと推察されるが、登場人物を人間ではなく動物にすることでその対比をより浮き彫りにしているのだろう。まあ、未読なのでこれは予想に過ぎないが。

 

なんにせよ、非常にメッセージ性が強く、見ごたえのありそうな内容だ。あとはアニメーションとしてのクオリティが大丈夫か、という話になってくるが......本作はその点についても全く問題ない。

 

理由②:オレンジ制作

アニメーション面で不安がないのは、制作がオレンジだから。オレンジは3DCG専門のアニメーション会社で、長年積み重ねてきた3DCGのノウハウと作品づくりに対する強いこだわりに特徴がある。その技術力とこだわりは前作『宝石の国』で十分に証明されている。オレンジの作るCGはナチュラルかつダイナミックで、CGによく感じられる違和感(気持ち悪さ)のようなものがない。これについては『宝石の国』のレビューで説明しているので、詳しく知りたい人にはそちらの記事を読んでもらいたい。

 

前作で宝石達のスタイリッシュなモーションに魅了された僕としては、オレンジが今回の『BEASTARS』でどんな映像表現を魅せてくるか、非常に楽しみである。


 

ハイスコアガール II』(自信:80%)

原作:押切蓮介(掲載 月刊「ビッグガンガンスクウェア・エニックス
監督:山川吉樹
シリーズ構成:浦畑達彦
CGI:SMDE
アニメーション制作:J.C.STAFF

あらすじ(公式HPより引用)

(1期)

俺より強いGIRLに会いに行く──。

「ポリゴン」って何?食えんの?そんな2D全盛期だった古き良き格ゲーブーム到来の1991年。
ヤンキーとオタクとリーマンが蔓延る場末のゲーセンに、彼女は凛として座していた──。

主人公ハルオを通して描かれる’90年代アーケードラブコメディー!

(2期)

少年は好きだった、ゲームが。
少女は出会ってしまった、ゲームと。

勝利への渇望と、技術の探求心と、個人の自尊心が渦巻くゲームセンターで生まれ、育まれていく友情と恋。友人や家族、そしてゲームキャラクターに支えられ、少年少女たちは強く、大きく成長していった。あきらめなければ無限コンティニュー?

ハルオ、晶、小春が挑むファイナルステージの行方は!?

 

理由:1期がハチャメチャに面白い

この作品を覇権候補に選んだ理由はこれだけ。ひたすら面白かった1期の正統な続編ということで、もう間違いなく面白い。制作陣も1期と変わらぬ布陣で盤石の体制だ。

 

ハイスコアガール II』は1期をまだ観ていない人にはおすすめできない。ただ、一から観れば絶対に後悔しない作品であることは断言できるので、未視聴の方はストリーミングサービスなどで1期を履修の上、10月から始まる2期も視聴することをおすすめする。

 

未視聴の方に向け、この作品の魅力をネタバレなしで紹介しておこう。ちなみに1期の僕の評価は★4.5(2期が終わったら改めてレビューする予定)。

 

ハイスコアガール』は一言でいえば、「緩急自在のジェットコースターみたいなラブコメ」である。序盤はギャグのテンポがとにかく軽快で、「Aパートだけでこれだけ笑わせられるのか!」と感心してしまうくらい次々と笑いが仕掛けられる。かと思えば、一転して上質な純愛展開に切り替わったりもする。純愛を描く上では欠かせない登場人物の心理描写も、非常に繊細で巧みだ。そして、この作品の最大の魅力は、上述の「ラブ」と「コメディ」の絶妙な緩急(メリハリ)にある。緩急のつけ方が巧いため、『ハイスコアガール』は観ていて本当に「飽き」が来ない。あっという間に時間が過ぎていく。「ジェットコースター」という表現を使ったのはこのためだ。

 

また、舞台となる’90年代のゲームセンターのリアルな描写も『ハイスコアガール』の大きな魅力だ。実在するゲームが数多く登場するだけでなく、「台パンのせいでボタンが反応しなくなったゲーム筐体」、「入力コマンドが複雑すぎて出せない必殺技」、「後ろに並ぶ人から感じる『早く終われ』というプレッシャー」など、その世代の人なら「あったあった!」と興奮してしまうような懐かしいネタが豊富に仕込まれている。僕はゲーセン世代ではないのでそういった共感はなかったが、「昔のゲームセンターってこんなだったんだ」という新鮮さが味わえた。

 

チープな絵柄(もちろん良い意味で)とは裏腹に、内容としては結構大人向けな作品と言えるだろう。


 

『ノー・ガンズ・ライフ』(自信:60%)

原作:カラスマタスク(集英社/ウルトラジャンプ連載)
監督:伊藤尚往
シリーズ構成:菅原雪絵
キャラクターデザイン:筱雅律
音楽:川井憲次
アニメーション制作:マッドハウス

あらすじ(公式HPより引用)

オレの名は乾十三。
あの大戦を経て、「拡張者」と呼ばれる身体機能拡張処理を施した者達が溢れるこの街で、オレは拡張者達に関する問題を「処理」する稼業を生業にしている――。

ある日、事務所を訪れた男から少年の保護を依頼された十三。
保護した少年をめぐり、十三はなりゆきでベリューレン社と事を構えることになり……?

 

理由①:キービジュアルを観て「ピンときた」

『ノー・ガンズ・ライフ』に関しては、ぶっちゃけフィーリングで選んだ部分が大きい。まず、キービジュアルを一目観て「ピンときた」。上手く言葉で説明できないのだが、頭部が銃器の大男、武骨なタッチ、媚びてないキャラデザ、シンプルな構図、そういったところに、最近のアニメとしては珍しい「潔さ」のようなものを感じた。何故かキービジュアルを観ただけで、作品の中身が凄く気になってしまった。

 

どういう作品か簡単に調べてみたところ、スチームパンクな世界観のSFハードボイルドらしい。思った通り、今どき珍しい武骨な作品だ。また、アマゾンのレビューに目を通してみると、世界観の作り込みや重厚なストーリーを評価する声を多く見かけた。これはますます期待が高まる。

 

PVを観ても、やはりハードボイルド特有の「重苦しさ」があり、逆にスタイリッシュさは感じない。PV自体はお世辞にも洗練されているとは言えない出来だが、それでも、他の作品にはない何かをこの作品が持っているような気がしてならない。

 

とまあ、ここまでは完全に僕の「直感」だ。しかし、直感だけで『ノー・ガンズ・ライフ』を覇権候補に選んだわけではない。この作品を推すもう一つの理由は、スタッフとキャストにある。

 

理由②:『オーバーロード』『BLACK LAGOON』のスタッフ

本作の監督の伊藤尚往氏とシリーズ構成の菅原雪絵氏は、『オーバーロード』シリーズを手掛けた二人だ。『オーバーロード』は3期にわたって続いている人気作。そういう人気作を手掛けたタッグが指揮を執っているというのは非常に心強い。シナリオ面で作品が大きく崩れることはまずないだろう。一方、アニメーションは『BLACK LAGOON』の布陣。『ノー・ガンズ・ライフ』は『BLACK LAGOON』と同じくハードボイルドなので、作風的にも今回の布陣とは相性が良さそうだ。

 

キャストについても、諏訪部順一沼倉愛美日笠陽子をはじめとする実力派声優が起用されており、気合の入り方が窺える。『BLACK LAGOON』においては声優のシリアスな演技力が作品の重厚さに大きく寄与していたが、本作のキャスティングにもそのような意図が感じられる。

 

以上が『ノー・ガンズ・ライフ』を最後の一本に選んだ理由だ。観る人を選びそうな作品ではあるが、こういう今風じゃない作品がダークホースになったら面白いと僕は思う。

 

不安要素

さて、ここまで『ノー・ガンズ・ライフ』についてポジティブな面ばかり挙げてきたが、一つ大きな不安要素がある。それは、2019年9月16日の時点で放送開始日時が発表されていないという点だ。ちなみに、他のタイトルは既に詳細なオンエア情報が発表されている。放送日時が確定していない理由は定かではないが、制作作業が追い付いていない可能性も無きにしも非ずだ。もしそうなら、かなりまずい状況である。制作現場以外(放送局やプロデューサー側)の問題であれば良いのだが...。

 

この点が割と不安なので、『ノー・ガンズ・ライフ』は先に紹介した2本ほど自信をもって推すことはできない。杞憂であることを願うばかりだ。

 

(2019.09.19追記)

本日、ようやく放送日(10月10日)が解禁された。放送局はTBS・AT-XサンテレビKBS京都BS11・FOD(ストリーミング)。

 

ところで、ツイッターなどの反応を見る限り、この局編成はかなり変則的らしい。なんでも、通常は地上波民放キー局(TBSやフジテレビなど)のいずれか1系列 + 独立局といった感じで放送枠が決まるが、『ノー・ガンズ・ライフ』に関しては、TBS(TBS系列)+ AT-Xテレビ東京系列)+ FOD(フジテレビ系列)+ その他と、放送局の系列がごちゃごちゃになっているとのこと。

 

そういうわけで、オンエア情報の解禁が他の作品と比べて遅くなったのは、放送局側でなんらかのごたごたがあったためである可能性が高い(全然見当違いかもしれないけど)。放送局側の問題であるとするなら、放送日の告知が遅かったからといって作品のクオリティを心配しすぎる必要もなかろう。

 

以上を踏まえ、覇権予想の自信度を40%から60%に変更しておいた。完全に気持ちの問題ではあるが、安心して放送日を迎えられそうだ。

 

他に気になった作品

以下、視聴予定の作品。おそらく面白い。キリがないので理由は割愛。

・バビロン

PSYCHO-PASS サイコパス 3

・歌舞伎町シャーロック

アズールレーン

Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-

アサシンズプライド

無限の住人-IMMORTAL-

・星合の空

 

まとめ&雑談

単に面白い作品を観たいということであれば、放送中の作品を追いかけるなんて面倒なことはせず、過去の名作をストリーミングでまとめて視聴する方が間違いなく効率はいい。しかし、最新の作品の中から面白い作品を見つけ出したときの喜びや、次の回が気になって一週間後が待ち遠しくなる感覚は、放送中のタイトルを追うことでしか得られないものだ。それに、放送時期に(例えリアルタイムでなくても)観ていた作品というのは、ストリーミングサービスで観た作品よりも愛着が湧くし思い出にも残りやすい。

 

そういうわけで、アニメを本当に楽しみたいのであれば、ストリーミングやレンタルで過去作を観るだけでなく、TV放送で新作も観るべきだ、と個人的には考えている。

 

この記事は、そういう楽しみを誰かに伝えたくて書いた。

 

忙しい人も、普段そこまでアニメを観ない人も、今回紹介した3本は観て損はないと思うので、是非最後まで観てほしい。それでTVアニメを観る楽しみを知ってもらえたら、これ幸い。