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理屈っぽいアニメレビュー

【2019年秋アニメ】前半戦(~6話)感想まとめ

 

11月中旬になり、秋アニメも中盤に差し掛かってきた。今回は、そんな秋アニメのうち自分が視聴している7タイトルについて、ここまでの感想をまとめてみた。

 

 

★★★★☆(4.5)

『PSYCO-PASS 3』(~3話)

今のところ一番面白い。個人的には1期・2期よりも好き。

 

軽快なテンポで初回からどんどん物語が転がっていく。ストーリーの全体像(勢力図や利害関係)を序盤ではほとんど開示しない構成になっているためかなり頭を使うが、その分考察のし甲斐がある。一つ事件を解決する度にますます謎が深まるシナリオに、つい引き込まれてしまう。自分も捜査一係として事件の真相を追っているかのようなワクワク感が味わえる。

 

先の読めない展開に加え、今作の魅力を更に引き立てているのがW主人公の灼とイグナトフ。知的でしたたかな彼らは、優しく純粋無垢な前作の主人公、常守朱とはまた違った魅力をもっている。二人がそれぞれの得意分野を活かして事件の真相に近づいていくシナリオには、王道刑事もののおもしろさがある。1期と2期はそれぞれ狡噛と東金のワンマンプレイ的な側面が強かったので、今作のシナリオ運びはこれまでとはかなり趣が異なっている。

 

主人公以外のキャラクターも非常に魅力的。新キャラの廿六木と入江はいかにも潜在犯らしい乱暴な輩。これまでの執行官はみな潜在犯の割に性格が真っ当すぎる人間が多かったので逆に新鮮に感じる。また、今作の素晴らしい点は、この二人を単にクレイジーな潜在犯として扱わず、彼らの複雑な生い立ちや人間的な側面までしっかりと掘り下げているところ。こういう内面の掘り下げがあるおかげでキャラの魅力がグッと引き立つ。如月に関してはまだ大きな動きは見られないので、今後どのように物語に絡んでくるかが気になるところ。また、一係OBの狡噛・宜野座・六合塚が古株として再登場するシナリオはファンにとってはたまらない。人気アニメとしての積み重ねがあってこそできるキャラ配置と言える。これらの古参キャラと新キャラのコントラストも今作の大きな見どころになってくるだろう。

 

①展開の軽快さ・②キャラの掘り下げ・③キャラ配置の3点は今期のアニメの中でも頭一つ抜けていると思う。あと、OP・EDがめちゃくちゃオシャレ。まだ未回収の伏線だらけなので、今後の展開にも期待が持てる。

  

 

★★★★(4.0)

BEASTARS』(~5話)

前に上げた覇権予想の記事で紹介した作品。

 

予想通りかなり面白い。「ヒューマンドラマ」という分類の通り、登場人物(もとい登場動物)の心理描写に重きが置かれている。特に、レゴシ(ハイイロオオカミ)とルイ先輩(アカシカ)の対比は旨味たっぷりに描かれる。草食動物に対する身体的な優位性に責任を持てず、自らの感情とともにその力を押し殺してきたレゴシ。対照的に、類まれなる胆力と確固たる意志で肉体的なビハインドを克服し、学園のトップにまで上り詰めたルイ先輩。二人の人生観の対立が非常にスリリングで自然と引き込まれる。 この二人が演劇部の活動を通して互いの信条を認めていく過程も大きな見どころの一つだ。

 

レゴシとルイ先輩以外のキャラクターについても記号的なキャラ付けに留まらないリアルな人格が与えられている。キャラの人間性というのは彼らのセリフに色濃く表れるものだが、この作品はそのセリフ回しが非常に優れており、登場人物の言動一つ一つに自然さが感じられる。第5話で、「今の自分は嫌い?」というジャックの問いかけに対しレゴシは「嫌じゃないのが嫌だ」と答えるが、この返答なんかがまさにそうだ。ポジティブな変化を素直に受け止められない彼のややこしい性格がほんの数文字の中にぎっしり詰まっている。

 

キャラ一人一人の人格がリアルなだけでなく、動物同士の関係性(スクールカースト等)にも妙なリアリティがある。総じて「ヒューマンドラマ」として非常に完成度が高い。

 

また、綿密に練られた世界観はスキがなく、不自然な点がほとんど見当たらない。アニメーションの要である3DCGも言わずもがな完璧。流石はオレンジといったところだ。

 

このように『BEASTARS』が上質な作品であることは疑う余地もない。ただ、観ていて「何か」が足りないと感じるのも事実だ。そして、その「何か」とは「笑い」と「あっと言わせる展開」のどちらか、あるいはその両方であるという考えに行き着いた。これら二つは、同じくオレンジ制作の『宝石の国』にあって『BEASTARS』に不足している要素だ。5話ではレゴシとハルの食事シーンをはじめとして笑えるシーンもいくつかあったので、6話以降でもそういうシーンを見せてほしい。ストーリーに関しては、もう少し予想外の展開がほしいところだ。

 

上のがかなりわがままな注文だというのは理解している。それだけこの作品に対する期待値が高いということだ。

 

 

ハイスコアガール II』(13~18話)

 覇権第二候補。

 

ハイスコアガール』の作風および魅力は覇権予想の記事で簡単に説明しているのでそちらを読んでもらいたい。

 

ここからは『ハイスコアガール II』がめちゃくちゃ面白いという前提の上で1期との比較を行っていく。

 

正直に言うと2期は1期と比べて若干のパワーダウンが感じられる。具体的には1期でキレキレだったギャグが2期ではそれほど観られなくなり、相対的にラブコメの「ラブ」要素が増えている。あくまで体感だが、1期でラブ:コメ=4:6くらいだったのが2期ではラブ:コメ=7:3くらいになった。個人的には1期のバランスがベストだったように思う。ハイスピードなギャグの連続で視聴者を油断させ切ったところに、不意打ちで純愛展開を放り込む――このメリハリがあるからこそ『ハイスコアガール』の「ラブ」は破壊力抜群なのだ。この方程式が2期では若干弱まっているように感じる。

 

気になるところはそれくらい。1期と同様に演出と展開は素晴らしい。晶と小春は相変わらず一途で魅力的なヒロインだし、新キャラの晶の姉ちゃんもいい味出してる。特に2期では小春の魅力が際立っている。対戦ゲームで負けてハルオにキレるところや、ファミレスでハルオを誘惑するところなど、なりふり構わずアタックする小春を見ていると、かわいいを通り越してむしろ切なくなってくる...。少々話が脱線してしまった。まあ要するに、2期もやはり素晴らしいラブコメ作品であるということだ。(この作品に関しては1期が面白過ぎたのがある意味最大の障壁かもしれない。)

 

ハルオ・晶・小春の青春ドラマもいよいよ佳境。ここから終盤にかけて盛り上がってくるのは間違いない。負け戦から退けない小春がどうやって自分の気持ちに区切りをつけるのか。ハルオに抱く想いにようやく気付いた晶がどんな行動をとるのか。3人の関係が不可逆的に変化する中、ハルオが何を選び取り、何を諦めるのか。今後の展開に目が離せない。

 

 

★★★☆(3.5)

『星合の空』(~5話)

登場人物が抱える「闇」のチョイ見せが絶妙。ソフトテニスという題材、中学生という年齢設定、繊細なタッチの作画。そういう要素が与える柔らかな印象とは裏腹に、ストーリー自体はかなりシリアス。部活を通して描かれる「友情」「成長」「青春」― ―この甘美なパステルカラーに、一滴ぽたりと垂らされた「闇」が映えること映えること。このメリハリこそ『星合の空』の最大の魅力である。

 

青春作品における少年・少女が抱える「闇」といえば、才能に対する嫉妬であったり敵対する同級生への恨み――いわば、原因も解決も自分次第の問題――である場合がほとんど。一方で、この作品は家庭環境という自分自身ではどうにもならない類の「闇」に焦点を当てているところに新規性がある。

 

正直、作品として面白いか面白くないか問われると今の段階では何とも言えない。男子中学生としては擦れすぎているキャラは正直共感しにくいし、彼らの特殊な家庭環境についても少々「やりすぎ」な感は否めない。しかしそれでも、この作品のもつ独特な空気感やぐらぐらと危なっかしい登場人物の心理に目が離せないのは確かだ。

 

今後、彼らが自分の抱える問題とどのように向き合っていくのか非常に気になる。

 

一つこの作品の気に入らない点として、男子部員同士の物理的な距離が近すぎることが挙げられる。同じ男子としては観ていて少し違和感を覚える。女性ウケを狙っているのかもしれないが、個人的にはこの作品には不要だと思う。

 

 

★★★(3.0)

Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』(~6話)

戦闘シーンの作画は今期の中でもダントツ。ワンカットの尺がかなり長いため、臨場感が凄まじい。カメラワークにもセンスを感じる。引き気味で全体を映すところとアップで迫力を演出するところの使い分けが秀逸で、クオリティはもはや劇場アニメの領域。動きだけでなく攻撃のエフェクトやSEも洗練されており、ひたすらかっこいい。FGOユーザーの課金力が作画にモロに反映されている。

 

他方、ストーリーは原作ファン以外が容易に入り込めるものではない。FGOシリーズについての予備知識が相当に必要とされるシナリオになっている。仮にWikipediaなどを通して前作までの流れを把握した上で観たとしても、実際にプレイした経験がない限り作品に没入するのは難しいだろう。同じ理由から、キャラに対する感情移入もしづらい。また、展開がかなりゆったりしているので、物語にグッと引き込まれる感覚も薄い。

 

キャラに魅力があるか否かという点に関しても正直微妙。確かに作画は素晴らしいしキャラデザも優れてはいるが、如何せん心理描写が大味すぎるので愛着が湧かない。何というか、物語のコマとして都合よく扱われているような印象を受ける。(原作既プレイであればこのあたりの印象も変わってくるのかもしれない。)

 

そういうわけで、良くも悪くもFGOファンのためのアニメである。ファン以外にとっては戦闘シーンを楽しむのがメインの作品になりそう。

 

 

★★☆(2.5)

アサシンズプライド』(~6話)

どこかで見たような世界観。どこかで見たような設定。どこかで見たような戦闘。どこかで見たようなキャラデザ。良く言えば王道。悪く言えばありきたり。正直シナリオ面にはあまり魅力を感じない。ただ、自分の存在証明をかけて戦うメリダは素直に応援したくなる魅力的なキャラクターだと思う。

 

作画は良い方ではあるが飛びぬけて良いわけでもないので、それ目当てに観る作品ではない。

 

ストーリーの進行速度としてはかなり速い部類に入る。速すぎる気がしないでもないが、個人的に遅すぎるよりは好み。ただ、先にも述べたように展開自体はありきたりで、今のところ予想を裏切ってくる感じはない。今後の展開に期待したい。

 

OPとEDは非常にオシャレ。特にOPのセンスは今期でもトップクラス。(OPがかっこいいだけで視聴意欲が4割くらい増すのだが、こういう人は決して少なくないと思う。)

 

メリダが報われるところが見たいので最後まで切らないつもり。

 

 

『ノー・ガンズ・ライフ』(~5話)

覇権予想の記事で紹介した作品。

 

僕はこの作品に『BLACK LAGOON』的なハードボイルドを期待していたのだが、その期待は裏切られた。まず大きな問題として、SFハードボイルドと銘打っている割に展開がゆったりすぎる。銃三・鉄郎・ベリューレンのいざこざから中々話が進展しない。「いざこざ」という表現の通り、敵との抗争のシリアスさも乏しい。基本的に銃三は敵を殺さないし、敵は敵で民間人は手にかけるクセに銃三と鉄郎を本気で捕まえようとはしない。ものすごく悪い言い方をすれば、三文芝居のようにも見える。ひと世代前のマンガに観られるような古典的なデフォルメ表現もスチームパンクな世界観の純度を濁しており、作品全体の緊迫感を更に殺いでいる。

 

僕が『ノー・ガンズ・ライフ』を覇権候補に挙げたのは、この作品に「マッドな」何かがあると期待したからだ。しかしこの作品には『BLACK LAGOON』に感じられたような「マッドさ」はなかった。「己の信じた正義を貫く」というテーマについても、肝心要の主人公の正義が最大公約数的なありきたりなものなので、心は動かない。

 

良い点もある。まず、ストーリーの進行は非常に丁寧。誰が観ても話が分かるくらい状況説明はしっかりしている。設定にも大きな粗はみられない。あと、作画は特段良いわけでもないが安定はしている。今のところ、シナリオと作画に破綻はみられないので、今後の展開次第では良作になる可能性も残っている。

 

自分で覇権候補に挙げた作品なので、とりあえず最後まで観る予定。ただ、ここから覇権になることは絶対にありえない。